「想像を超える創造」de'plas

COLUMN − コラム −

− 店舗デザイン − 固定概念を払拭し、芸術家が創造する魅力のある空間

先日とあるカフェを訪れた。山の上に設けられた2階建ての店舗で、駐車場から店内までのアプローチとなる細い山道を徒歩で1分くらい登り入口の前に立つ。全面ガラス張りのファサードの先に見える絶景にまず私は心を奪われた。

 

入口から店内、そしてその先の壁面を通じて、全面ガラス張りでパノラマに広がる景色を眺めることが出来る。店内に入るとカウンター席、テーブル席のゾーンに分かれており、その二つのゾーンにはレベル差があって、それぞれ異なる目線で眺望を楽しむことが出来る。

 

S__4030569カウンターには8名ぐらい座ることができ、正面のガラス面は、山や木々がフレームとなり、地上のまち並みを見下ろせ、まるで大きな風景画のような芸術を感じることが出来る。

カウンターは一枚板の天板でシンプルながらも高級かつダイナミックな存在感を演出している。また、カウンター席のすぐそばには特注で制作したであろう特大のワインボトルを収納するガラスケースがあり、そこに展示してあるワインボトルと夜の夜景を想像しただけで、最高のひとときを過ごせるであろう。

 

そして、ふと店内を見渡せば随所にモニュメントや造形アート・オリジナルアクセサリー・作品を展示するショウケースがある。また、テーブルや配膳のお盆までそれぞれがオリジナルの芸術作品となっており、きっとオーナーが芸術好きで、様々な芸術家の作品を展示し、このハイセンスな建築物も建築家が設計したものであろうと想像がついた。

 

ところが、店員の方に尋ねこのアートの作品はオーナーの趣味ですか?と聞いてみると、これらの作品は全てオーナー自身がデザインし、制作したものとのこと。様々なジャンルのアートがあり、これらを創造するのにはかなりの知識とセンスが必要であるし、好きだけでは到底到達出来ないレベルの作品だと感じた。

さらに驚くことに、この建物自体もオーナーがデザインした建築物であるという。実施設計はおそらく建築士が行ったのだろうが、常識からするとビックリするような要望があったのであろうことは間違いないと思う。

 

建築コラム1階段で上がる2階の天井まである吹き抜けの空間には、一部2階のフロアから渡れる通路と小スペースがあり、そこにはピアノが設置されている。そこでは週末にピアノ演奏が行われ、訪れた人が音楽を楽しむことも出来るという。

 

2階は全席ゆっくり出来るソファー席となっており、こちらも全面ガラス張りで1階とはまた違った目線でマウントビューとまち並みを見ながらゆっくりくつろげるカフェとなっている。

 

 

そして、2階にも彫刻やモニュメントが展示してあり、テーブルや様々な小物にまで一つ一つにこだわりのある作品となっている。

 

私は建築とは最も大きな芸術作品であると考えているが、この魅力ある空間に接し、建築の計画・法規・構造・施工の基本知識や固定概念があるゆえに、思い切って本当に私がお客様に提案したい空間を創造することがはたして出来ているだろうかと考えさせられた。

私はこの場所を訪れ、芸術家が発信する魅力ある空間づくりに新たな可能性を感じる良い機会となった。