「想像を超える創造」de'plas

COLUMN − コラム −

− 店舗デザイン − 伝統×革新の融合

 

 

「一藤 博多店」は福岡県博多区博多駅前という好立地にあるもつ鍋屋である。この店舗は今泉本店と天神西通り店に続き、3店舗目として出店された。福岡市民だけでなく県外にも多くのファンを持つ有名店である。これまでは、商業テナントビルでの出店であったが、今回は初の一棟建てビルでの出店となった。

 

オーナーからの要望は、老舗感がありつつもスタイリッシュなデザインとのこと。また、一棟建てなので、外観ファサードにもこだわりたいとのことであった。客席に関しては、プライベート感のある個室と、10~20名の団体客、そして最大50名までの団体客が取れるような計画としたいとのことであった。

 

担当デザイナーは、老舗の伝統あるもつ鍋屋というイメージをベースに、空間デザイン要素である、形・素材・光・色に現代性を巧みに取り込んで融合させ、老舗の風格を漂わせながらも、現代的な優雅さも備える独自性の高い、新空間を創造することとした。

 

この一棟建てビルは4階建ての建物であるが、各階の空間構成として、小人数で来訪されるお客様のために1階を最もプライベート感のある空間とし、2階3階と上がるにつれて、より多人数のお客様や団体客にも対応できる構成とした。4階に関しては床面積が他の階より狭かったため、事務スペース兼倉庫・休憩室とした。

 

外観に関しては、お客様を惹きつけるための集客に関する重要なポイントであるため、まず1階の外壁をセットバックし、アプローチを設けた。そして、外壁にアルコーブやスリットを設け、間接照明を随所に仕込むことにより、単調な空間に変化をつけ、余裕のある空間を設けた。素材として、床は石タイルのデザインパターン貼り、壁は外側をリシン吹き付け塗装、内側を塗り壁くし引き仕上げ、天井はスチールウレタン塗装、建具・家具は無垢材や突き板を染色塗装とした。また、濡れ縁を設け、和モダンな庭園風のアプローチとすることで、お店の特徴を個性的かつ魅力的に表現し、お客様の五感に訴え、来店動機へと繋がる環境づくりを行った。

 

サイン計画に関しては、外壁に店名と落款をバックライトで照らす浮遊感のあるチャンネル文字、家紋を施し特大の行燈をイメージしたデザインのコルトンサイン、電照式の袖看板を設けた。アプローチ入口には、透明アクリルを壁面に埋め込み、スポットライトで照らしたサイン、オリジナルの暖簾を設けた。また、店内入口には、杉の一枚板に店名を浮き彫りにした看板、木のエントランスドアに家紋のカッティングシートサインを設けた。

 

1階に関しては、2~4名の個室を中心とし、プライベートを重視した空間となっている。

靴を脱いで上がる掘りごたつの個室もこの階のみの特徴である。一部エントランスに隣接する個室は土足となっているが、こちらは車椅子で来店されるお客様が、スムーズにアクセスでき、そのまま食事を楽しめるように計画したものである。

仕上げ材として、エントランスの床は墨モルタル四半目地仕上げ、客室床は木のフローリング張り、壁は珪藻土クロス仕上げ、天井はクロス仕上げ、一部間仕切りは木格子壁の染色塗装仕上げ、建具は木の染色塗装と雲竜柄のワーロン紙を使ったオリジナルの縦格子戸、カウンター・家具は木目調の化粧合板仕上げとした。また、空間のアクセントとして、エントランスカウンターの上部に温かい光がこぼれるハンス-アウネ・ヤコブソンのコードペンダントを取り入れた。外壁に隣接する客席には、和の伝統を受け継ぐ地窓を設け、濡れ縁と路地行灯を眺めることができ、程良い強さの柔らかい光が差し込んで和やかな空間を演出する。

 

2階に関しては、基本的にテーブル・イスの席で、一部お客様がゆったりと食事を楽しめるソファー席となっている。また、個室も設け、数箇所に設置する間仕切りを脱着することにより、4名~20名までフレキシブルに対応できる個室となる。個室は全て窓側に面しており、窓の外には縦のルーバーで仕切られた小空間があり、そこに植栽とアッパーライトを設置、都会の街中にも解放感とプライベート感を兼ね備えた空間を演出した。オープン席のデザインは、お客様が2階に上がって来た際の第一歩目で、最高のひとときを過ごせるだろうというイメージを持ってもらえる様に集中して計画を行った。そのため、壁を設けず圧迫感を与え無いようにし、店舗の一番奥まで見通せることで開放感を持たし、店内のにぎわいやシズル感を体感できるようにした。また、食事を楽しむ際のプライベート感も重要であるため、今回計画したのが、升格子の間仕切壁である。15mmの板で縦横135mmピッチのグリットを組み、50mmの厚みの間仕切りを建てることで、通路動線や客席のゾーン分けを行い、かつ客席のプライベート感を保ちつつも開放感のある空間を演出した。

 

仕上げ材として、客席の床は色調の違う3種類の木目調の塩ビタイルをランダムに矢羽状に敷き詰めたヘリンボーン張り、壁は珪藻土クロス仕上げ、天井はクロス仕上げ、間仕切りは升格子の染色塗装仕上げ、建具は木の染色塗装仕上げ、カウンター・家具は木目調の化粧合板仕上げとした。また、壁面の一部をアクセントとして、黒竹を使用した黒竹壁とした。そしてその壁面にニッチを設け、内部を金箔壁紙で仕上げ、間接照明を仕込むことで、スタイリッシュな和空間を演出した。また、天井の一部を折り上げ天井とし、光源を隠して天井面を照らすコーブ照明を計画し、天井面に柔らかい光を拡散させた。

 

3階に関しては、全席テーブル・イス席となっており、お客様を最大18組まで受け入れることができる大空間とした。また、可動間仕切りを2箇所設けており、16~20名の個室として3部屋に区切ることも可能となっている。そして、3階を貸し切りとすれば最大52名の団体客も利用が可能となっている。

仕上げ材として、客席の床は独自性の高いタイルカーペットとし、追風模様の優雅に染め上げられた多様なパターンと色調を組み合わせて、上質な和空間を演出した。壁は珪藻土クロス仕上げ、天井はクロス仕上げ、可動間仕切りはアクセントで差し色の和柄クロス仕上げ、建具は木の染色塗装仕上げ、カウンター・家具は木目調の化粧合板仕上げとした。また、店舗ブランディングの一助となる仕掛けとして、様々なサイズの家紋を随所に配置し、お客様に自然と店舗のブランドイメージを刷り込むような仕組みを施している。家紋は隠れ家紋も含め、1階~3階までに全部で50ヶ所存在する。

 

店舗を創立して一気に繁盛店へと駆け上がり、観光客にも愛され、福岡を代表する名店となった「一藤」が一棟建てスタイルという新たな形態で、さらなる発展を遂げようとしている。