「想像を超える創造」de'plas

COLUMN − コラム −

− 店舗デザイン − 大正モダンという新感覚の空間創造

白山舎1

 

「欧風カレー白山舎」は佐賀県佐賀市の三瀬村にあるカレー屋である。この店舗は佐賀市民に愛され県内外に多くのファンを持つ、佐賀市中心に構える昭和33年創業のレストラン「白山文雅」の系列店であり、フレンチをベースとし、甘さと辛さを絶妙に調和させた優雅な欧風カレーを堪能できる名店である。

 

今回は、福岡から佐賀へ下道で向かう際、三瀬トンネルを抜けて国道263号線沿いにまっすぐ進むと右手に見えてくる位置に店舗を構えることとなった。福岡・佐賀間を旅行・ドライブや仕事で行き来したことがある方であれば、一度は目にしたことがあると思われる、比較的に交通量の多い好立地である。

 

白山舎6

オーナーからの要望は、既存の建物が和風であるが、今回欧風カレーの店舗となるため、大正ロマン風のイメージにしたいとのこと。また、道路から建物の見通しが悪いため、計画にあたり視認性を良くしたいとのことであった。

客席に関しては、土日のみ夜の営業をされるということで、三瀬の立地を考えると、回転率よりも一度に客数を多くとれるよう席数を増やすのが最優先とのこと。また、動線計画としては、厨房から客席への見通しが効き、食事・ドリンクの出しと下げを区画し、動線が被らないようにしたいとのことであった。

担当デザイナーは、大正ロマン風の外観に改修するには建築コストがかなりかかると判断。少し観点を変えて、和風の建物をリノベーションし、大正モダン的なコンセプトで提案を行った。オーナーにも、このコンセプトに共感して頂き、意匠デザインに関してイメージの共有が図れるとともに、さらに深く計画を進める運びとなった。

 

白山舎2

まず外観に関しては、店舗のメインファサードとなる範囲に関して、外構のフェンスを撤去し、植栽も低く剪定することで、道路から店舗への視認性を高めるとともに、敷地内入口に導入サインを設置し、お客様がスムーズなアクセスが行えるようにした。また、駐車場の入口には、防犯面からポール&チェーンを設置、施錠できるようにした。敷地・メイン駐車場から店舗までのアプローチには、安全面や意匠面を考慮し既存の砂砂利や石畳等で雨天時に足場の悪かったところを整地、庭園風に砂利を敷き風情のあるアプローチ空間を演出した。

外観の視認性を良くする計画に加え、もう一つお客様がまた次の来店動機に繋がるための計画の一環として、敷地入口の導入サイン・庭園・駐車場・店舗入口に照明を設け、夜のライトアップを行い、幻想的な空間演出が行えるようにし、より多くの通行者に店舗の存在をアピールできる計画とした。

 

また店舗内に関しては、エントランスカウンターは既存で設置してあったアンティークカウンターを流用、照明はステンドグラス調のコードペンダント、床は石目調タイルのデザイン貼り、壁と天井は木と白の漆喰で計画を行った。また、建具や床の一部、雑貨のコーディネート等で赤色のアクセントを加え、大正モダンというイメージを創出した。

 

白山舎9

客室空間に関しては、客席数を多く取れるようにとのオーナーの要望に応えるため、既存のオープンテラス席まで店内スペースを増床し、3テーブル(12席)多くお客様が利用できる空間を設けた。また、オープンテラスは増床してもスペースがあったため、テラスにもテーブルとイスを設け、店内に面する外壁を大きめの格子窓とし、店内から眺めるとオープンテラスと杉林が一望できるようにして、空間の広がり感を持たせ、お客様が開放感のある空間で食事を楽しめるように計画した。また、お客様と従業員の動線計画に関しても、オーナーの要望通り効率の良い店舗運営が行えるように計画を行った。

 

店舗を創立して半世紀の佐賀の名店が「優雅な欧風カレー」と「大正モダンな空間」というコンセプトのもと、新たな価値を創出し、福岡市民と県内外の人々に愛される名店として大きな一歩を踏み出されたことに、心からの敬意を表し、ますますのご繁栄を祈念したいと思う。